昔々の話だけど、僕は芦屋に住んでいた。
そのころ、(今でも)ナス・スイミングスクールの道路に沿って、橋を渡るとすぐ左手にダイエーがあった。その頃の主婦は、きっと買い物と言うとそのダイエーか、少しはなれたコープに行っていたんだと思う。
中には「毎日ラポルテとかイカリスーパー行きますのよ。ホホホ・・・」というマダームがいるのかもしれないが、普通の人は、きっとコープ&ダイエーだったであろうと強く思う。芦屋浜には、日常的買い物スポットと言えばそんなものしかなかったのだ・・・
だから、ちっさい頃僕も、母に連れられてよくダイエーに行った記憶が有る。ダイエーの入り口に入ると、なんていったらよいのかわからないが、ダイエー(そういう形態のショッピングセンター)特有の匂いがしてくる。あれは日本以外のショッピングセンターに行っても同じにおいがするからおもしろい。
周知のことだとは思うのだけれど、ダイエーといっても、その中には、なにやら色々な店が入っていて、子供ながら、好奇心を湧きたてられると同時に不思議な空間だぁとも思った。
ダイエーの(たまにはさまった)ぎこちない動きの自動ドアを通り、目の前のエスカレーター(クレープ屋の横を動いていてここがとても美味しそうな甘い香りを放っている)をあがると左手に喫茶店が有る。
僕は、何度かその喫茶店に入ったことがあった。と、いってもそれはもちろん母の買い物のついでであって、それ自体にたいした意味があるわけではない。
その日も、なにやら上機嫌な母が買い物を終えて「喫茶店いこか?」と僕に言ってくれた。たいした店ではなかったが、それを今でも覚えているくらいだから、相当嬉しかったんだと思う。
さっそく店の中に入り、テーブル席に座る。大体お昼過ぎなのに周りには変なマダムや新聞を読んでいる男の人がいたと思う。
メニューを見て母が「ブルーベリーソースのワッフルセット」をたのみ僕は「ホットケーキ」をたのんだ。
やってきたホットケーキは、メープルシロップと言う、見慣れない、とても甘い匂いのする蜂蜜と共にやってきた。そしてホットケーキには、バターと言うものが乗っかっていた。(家に有るバターとは違うんだなぁと思っていたら、僕の知っていたのはマーガリンだった。それ以来積極的に北海道バターを使用するようになった。)
母の頼んだ、ワッフルにはバニラアイスが乗っていて、その上からブルーベリーソースがかけられている。世界にこんなに美味しそうな食べ物があるなんてすごいなぁと素直に思ってしまったよ。
ホットケーキを食べてみて、バターのしょっぱさとメープルシロップの甘さが最高にマッチしていたことに驚いた。それはまさに、革命だった。
美味しそうだなぁと思っていた母のワッフルを食べてみると、ワッフルがアツアツなのにバニラアイスはとても冷たい。その組み合わせとブルーベリーの酸味が絶妙な味をしている。「なんて美味しいんだ!」
食べ終わって家に帰る途中も、「美味しかったなぁ」と、ずっと思っていた。あの頃がとても懐かしく思う。
それから10年以上・・・最近、また、あのワッフルを食べてみたいと思う。
※つい最近ダイエーに行く機会があったのでみてみたら、もうとっくにつぶれてなくなっていました。でも、それでよかったのかもしれないな。