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あとみよそわか  毎日が小春日和  つばたさん

つばた夫妻は、日本のターシャ・テューダーのような存在で、日々の生活を豊かに暮らすにはどう言うスタイルが良いのか?と言うのを追求した夫婦だと僕は思っています。「ゆたか」と言うのは、実は大変せわしなくて「働き蜂のようにせっせと一生懸命に蜜を集めるのに似ている」と何冊かつばたさんの著書を読んで考えるようになりました。

いつだってどんな季節にだって、自分たちの望むやりたいことをせっせとやるのは、前に進むと言うことなんだなと。夫のしゅういちさんが亡くなったのも、その進んだ先に逝かれたのだと思いました。人は誰でもが必ず生まれて死んでゆく。この時の「あとみよそわか」はきっと周りの人々が考えるのでしょう。そして、亡くなった後もみんなの生活は「毎日が小春日和」と止まらないのです。

愛知県のニュータウンで、夫婦ふたり。キッチンガーデンで野菜を育て、換気扇のない台所で保存食をつくり、玄関のないワンルームの丸太小屋で暮らす。簡素だけど優雅な歳時記です。

はる、なつ、あき、ふゆ。キッチンガーデンで野菜と果実を育て、換気扇もなくお湯の出ない小さな台所で、本物の味がつまった食事を作る。時間が「おいしい」を作るを信条に、畑も料理も気長に気長に根気よく。ていねいに向き合ってきた、87歳と90歳のものがたり。

しゅういちさん没後、何をするにも虚しく感じていた英子さん。食べることもおろそかになり、キッチンガーデンもなおざりに。すっかり時が止まってしまいました。

ふたり合わせて、171歳の青春。だんだん美しくなる人生を設計するのは、けっして夢ではありません。健康で、病気知らず。元気で、ちょっぴり弱虫。お金はなくても、何かがあふれている。「おもてなし、大好き。プレゼント、大好き」な、素敵なじーじ・ばーばになれるんです。これは、小さなキッチンガーデンから、次世代に届けるやさしいメッセージです。

『ときをためる暮らし』その後、4年あまりの日々の記録。老いたら老いたなりに、楽しくなることを考え、実践してきたしゅういちさんが昨年(2015年)、他界。造成地に建てた丸太小屋、落ち葉を入れて蘇らせた土。ふたりが積み重ねてきた半世紀の歳月は、いまも英子さんが同じように営み続ける。自分に課し、誰かのために手足を動かす日常とは。

「あとみよそわか」の呪文の意味は、どうやら昔からある言葉で、「あとを見よ、そわか…」のそわかとは、梵語(仏教語)。例えば「般若心経」の最後から二行目の「菩提薩婆訶(ぼうじそわか)」から来ているものだと云う。ものが成る時(成就)、人の去り際(亡くなる時)、何かから境遇を脱する時、その際(きわ)を振り返り「あとみよそわか、あとみよそわか」と呪文に唱えて、物事の成るを願う。成るか成らぬかの是非を心に留めるように、振り返れと云うことらしい。

https://36sanako.at.webry.info/200905/article_7.html